私は以前、定職のなかったころの最後の六年間ほど、ヴァイオリンの恩師の晩年のお世話をしたことがある。その方は、パーキンソン氏病で施設に入っていた。一応の面倒は施設の人がやってくれるが、こまごまとした買い物とか話し相手には困るので、毎週言われたものを持って通ったものである。
そのすぐ前に、母の看病をしていたので、病人の扱いには慣れていたが、老人の病人はほぼ初めての経験だった。
老人には、昔食べたおいしいものの記憶が鮮明に残っているようで、しばしば申し付かった。戦前のモダン・ボーイらしく、洋菓子の注文が多かった。それも、高円寺のトリアノンのシュークリームが食べたい、というように店の指定つきである。
いまどきシュークリームなどどこにでもある。幸い緑内障で眼も見えないから、適当にごまかしておけばいいようなものであるが、万一見破られた場合、多いに具合が悪いので、結局指定された所までそのつど出向いたものだ。よほど暇だったからできたのだと思う。
ところが、せっかくそうやってお持ちした菓子も、食べてみると思い描いたような味はしない。店の味が変わったというより、先生の身体が、もう受け付けないのである。一口だけ口にして「もういいです」と言われる。こうやって、一つ一つこの世の歓びと決別する場に、私は立ち会うことになった。
そのすぐ前に、母の看病をしていたので、病人の扱いには慣れていたが、老人の病人はほぼ初めての経験だった。
老人には、昔食べたおいしいものの記憶が鮮明に残っているようで、しばしば申し付かった。戦前のモダン・ボーイらしく、洋菓子の注文が多かった。それも、高円寺のトリアノンのシュークリームが食べたい、というように店の指定つきである。
いまどきシュークリームなどどこにでもある。幸い緑内障で眼も見えないから、適当にごまかしておけばいいようなものであるが、万一見破られた場合、多いに具合が悪いので、結局指定された所までそのつど出向いたものだ。よほど暇だったからできたのだと思う。
ところが、せっかくそうやってお持ちした菓子も、食べてみると思い描いたような味はしない。店の味が変わったというより、先生の身体が、もう受け付けないのである。一口だけ口にして「もういいです」と言われる。こうやって、一つ一つこの世の歓びと決別する場に、私は立ち会うことになった。
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| — | ララビアータ:禁酒月間 (via ginzuna) |


いい!ちょういいねえ!私はインドねシアン人だけど、このミュジックは日本にはえたらうれしい!!
DUGEMさいこう!!!